COLUMN部分矯正はなぜ否定される?向いている症例と治療前に確認したい4つの質問

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部分矯正はなぜ否定される?向いている症例と治療前に確認したい4つの質問

青山 健一
著者: 青山 健一 (アオヤマ ケンイチ) (You矯正歯科 大阪梅田院 院長)

「部分矯正はやめたほうがいい」「前歯だけ動かすと噛み合わせが悪くなる」。こうした意見を見ると、治療を迷う方もいるでしょう。

You矯正歯科の考えは、症例をきちんと選べば、部分矯正は非常にいい治療であるというものです。問題は部分矯正という方法そのものではなく、部分矯正では治せない患者さんまで、その方法で治そうとしてしまうことです。

部分矯正への否定意見について、当院の考えを動画で説明しています。

動画をYouTubeで見る:「部分矯正はやめとけ」は本当?やり直しになる人の共通点

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部分矯正とは、治療範囲と目標を限定する矯正治療

部分矯正は、治療する範囲と治療目標を限定した矯正治療です。限られた歯を動かす治療は、MTM(部分的な歯の移動)として以前から行われています。

例えば、前歯1本が少しねじれている、以前の矯正後に前歯が少し戻った、前歯に小さな隙間がある、被せ物を入れるために1本の位置を整えたい、といったケースです。

奥歯の噛み合わせ、横顔、上下の顎の位置に大きな問題がなく、歯を並べるスペースもある。そのうえで一部分だけが気になるのであれば、全部の歯に装置をつける必要がないことがあります。

家に例えると、リフォームで十分なのに、家を全部建て直す必要はありません。気になる部分だけ直せばよいケースが、歯並びにもあるのです。

英国矯正歯科学会(BOS)も、診断に必要な項目を評価し、全体矯正などの他の選択肢も説明したうえであれば、限定的な矯正治療は成人の見た目に関する悩みに対応する選択肢になり得ると説明しています。
出典:British Orthodontic Society — Limited Treatment Orthodontics

部分矯正への5つの否定意見をどう考えるか

①「前歯だけ動かす矯正は危険」――問題は、動かしてよい症例かどうか

この意見に対して、私は半分賛成、半分反対です。危険なのは前歯だけを動かすことではなく、前歯だけを動かしてはいけない患者さんの前歯だけを動かすことだと考えているからです。

前歯がガタガタしていると、患者さんには「前歯だけ並べればよい」と見えるかもしれません。しかし、診断すると奥歯の位置が原因になっているケースがあります。見えている問題と、本当の原因が違うのです。

歯を並べるスペースそのものが足りないケースもあります。その状態で前歯だけを無理に並べようとすると、歯を外側へ出したり、歯と歯の間を削ってスペースを作ったりすることになります。場合によっては、患者さんが望んでいない方向へ歯を動かさなければなりません。

前歯だけを見て治療方法を決めると、こうした問題を見落としてしまいます。

②「部分矯正をすると噛み合わせが悪くなる」――治療は部分でも、診断は全体を見る

症例選択を間違えれば、部分矯正によって噛み合わせを悪くする可能性があります。ただし、それを理由に「部分矯正はすべてダメ」と考えるのは飛躍しています。

奥歯の噛み合わせがすでに安定していて、前歯1〜2本のわずかなズレを改善する患者さんまで、必ず全部の歯を矯正しなければならないわけではありません。

私が重要だと考えるのは、治療する前に、奥歯を含めて口の中全体を診断しているかどうかです。部分矯正だからといって、診断まで部分的にしてはいけません。

治療は部分でも、診断は全体を見る。これが部分矯正の大原則です。

治療範囲と診断範囲の違いを示す模式図

③「部分矯正はすぐ後戻りする」――なぜ短期間で終われるのかが大切

後戻りは部分矯正だけの問題ではありません。全体矯正でも起こるため、動かした歯を安定させる保定が重要です。

部分矯正にも注意点があります。見た目だけを短期間で整えようとして、歯の頭の部分だけが動き、歯根の位置まで十分にコントロールできていない。あるいは、必要なスペースがないのに無理に並べた。こうしたケースでは、安定性に問題が出ることがあります。

BOSの患者向け資料でも、短期間の治療で得られる変化には限界があり、歯根を含めた歯全体を適切な位置に動かす時間が足りない場合には、治療後に歯が元の位置へ戻ることがあると説明しています。
出典:British Orthodontic Society — Everything you need to know before having your teeth straightened

私が伝えたいのは、「3か月だからダメ」「6か月だからダメ」という話ではありません。なぜ、その期間で終われるのかを確認してほしいということです。

簡単な症例だから6か月で終わるのと、本来2年間必要な治療を6か月で終わらせるのとでは、意味がまったく違います。この期間は考え方を示す例であり、個々の治療期間を示すものではありません。

④「部分矯正では口ゴボは治らない」――口元を大きく下げたい方には全体矯正を考える

口元を大きく下げる治療は、前歯だけの部分矯正では難しいことがあります。特に患者さんに知っておいてほしいのは、口元を大きく下げたい、出っ歯をしっかり治したい、横顔を変えたいという希望を、前歯だけの部分矯正で実現しようとする難しさです。

「前歯が出ているから、その前歯だけ引っ込めてほしい」と思うかもしれません。しかし、前歯を後ろへ動かすには、後ろにスペースが必要です。

満員電車を想像してください。「前にいる4人だけ後ろへ下がってください」と言っても、後ろが満員なら下がれません。歯も同じで、前歯を下げるためのスペースを、どこかに作らなければなりません。

前歯を動かすためのスペースを説明する模式図

そのために奥歯を後ろへ動かしたり、歯列全体を調整したり、歯列の幅を検討したりします。症例によっては抜歯も検討します。

こうした希望がある患者さんは、全体矯正が必要になる可能性が高くなります。ここで無理に「安くできます」「前歯だけでできます」と説明してしまうことが、部分矯正の評判を悪くしている原因の一つだと私は考えています。

⑤「結局、部分矯正の後に全体矯正になる」――最初の見極めが重要

私が受ける相談には、「部分矯正をしたけれど治らなかった」「噛みにくくなった」「思っていた口元にならなかった」「別の医院で全体矯正を勧められた」というものがあります。

部分矯正の後に全体矯正が必要になると、追加の費用や治療期間が生じる場合があります。どのような場合に治療計画を変更するのか、費用はどうなるのかを、契約前に確認することが大切です。

それでも私は、部分矯正そのものが悪いとは考えていません。問題は、最初から全体矯正が必要だったのか、本当に部分矯正で治せる患者さんだったのかという、最初の診断と見極めです。

なぜ先生によって診断が違うのか――装置より、診断とゴール設定が大切

ワイヤーだけでなく、マウスピース矯正も普及し、デジタル上で歯の移動をシミュレーションできるようになりました。しかし、シミュレーションが作れることと、その治療計画が正しいことは別問題です。

私が矯正治療で一番大切だと思うのは、診断してゴールを決めることです。

部分矯正でよいのか、全体矯正が必要なのか。前歯を動かすと奥歯や横顔はどうなるのか。歯根は骨の中に収まるのか。歯周組織、つまり歯ぐきや歯を支える組織に問題はないか。治療後に安定するのか。こうした点まで考えて治療を計画します。

同じマウスピース、同じワイヤー、同じメーカーを使えば結果も同じになる、ということではありません。装置の名前だけで治療を判断せず、どのような診断と目標に基づく計画なのかを見てほしいと思います。

当院が部分矯正の適応を考える4つの条件

部分矯正の候補には、前歯のわずかなガタつき、軽度な後戻り、1〜2本の軽いねじれ、小さな隙間、被せ物やインプラント治療前に歯の位置を少し整えたいケースなどがあります。

ただし、気になる歯の本数や見た目だけでは判断できません。当院が大切にしている条件は、次の4つです。

  • 奥歯の噛み合わせに大きな問題がないこと。
  • 顎の骨格に大きな問題がないこと。
  • 歯を並べるための条件が整っていること。
  • 患者さんの希望が、部分矯正で達成できる範囲にあること。

こうした条件を満たす患者さんには、費用や期間を抑え、治療範囲を小さくできるメリットがあります。

反対に、私は次のような患者さんには、部分矯正を慎重に考えていただきたいと思っています。

  • 歯のガタつきや出っ歯が強い。
  • 受け口や開咬(前歯が噛み合わない状態)がある。
  • 噛み合わせが深すぎる、左右で大きく違う、奥歯の位置に問題がある。
  • 口元を大きく下げたい、横顔まで変えたい。
  • 顎の骨格に大きなズレがある。

こうしたケースでは、見える前歯だけでなく、歯列全体を動かさなければ問題を解決できないことがあります。

非抜歯矯正と部分矯正は、同じ意味ではありません

You矯正歯科では、できるだけ健康な歯を残す非抜歯矯正を重視してきました。その立場からお伝えしたいのは、「歯を抜かない」と「部分矯正」は同じ意味ではないということです。

用語の違いを示す模式図

「歯を抜きたくないので、前歯だけ部分矯正にしたい」と考えても、必ずしもその方法が適しているとは限りません。歯を抜かずに治療するために、奥歯を後ろへ動かす、歯列全体の幅を調整する、上下の歯列全体をコントロールするといった全体矯正が必要になる患者さんもいます。

当院でも「部分矯正でできますか?」という相談に対して、全体矯正をお勧めすることがあります。逆に「全体矯正を覚悟して来ました」という患者さんに、「この程度なら部分矯正で十分です」とお話しすることもあります。

医院が売りたい治療ではなく、患者さんに必要な範囲だけ治療する。これが当院の考え方です。

契約前に担当の先生へ聞いてほしい4つの質問

①「なぜ私は部分矯正だけで治せるのですか?」

「できます」という答えだけでなく、そう判断した理由を聞いてください。

②「全体矯正をした場合と、仕上がりは何が違いますか?」

部分矯正と全体矯正で、治療の目標や仕上がりにどのような違いがあるのかを確認しましょう。

③「部分矯正では治せないところはどこですか?」

できることだけでなく、できないことも説明してくれる先生かどうか。私はここを見てほしいと思っています。

④「もし部分矯正だけで治らなかった場合は、どうなりますか?」

追加治療が必要になるのか、全体矯正に変更する可能性があるのか、追加費用はいくらなのか。契約前に確認してください。

この4つについて説明を受けることが、納得して治療を判断するために役立ちます。

自分に必要な治療範囲を、診察で確認しましょう

「部分矯正で治せるのか」「他院で部分矯正を勧められたけれど、自分の希望まで実現できるのか」「できれば歯を抜かずに治したい」。そうした疑問がある方は、You矯正歯科へご相談ください。治療方法を先に決めるのではなく、歯並びや噛み合わせ、ご希望を確認し、必要な治療範囲を一緒に考えていきましょう。

無料相談では治療の概要や選択肢をご案内し、正式な治療計画は必要な検査・診断を経て検討します。青山医師の相談、および他院で矯正治療中の方の相談は有料です。受付方法は診療の流れをご確認ください。

よくある質問

Q. 部分矯正はダメな治療なのでしょうか?

A. You矯正歯科では、症例をきちんと選べば非常にいい治療だと考えています。部分矯正で治せる患者さんに行うことと、全体矯正が必要な患者さんを無理に部分矯正で治そうとすることは、分けて考える必要があります。

Q. 部分矯正でも、奥歯の診断は必要ですか?

A. 必要です。前歯のガタつきの原因が奥歯にあるケースもあります。私が大切にしているのは、治療範囲が部分的でも、診断では口の中全体を見ることです。

Q. 部分矯正なら、口元も大きく下げられますか?

A. 前歯を下げるにはスペースが必要です。口元を大きく下げたい、出っ歯をしっかり治したい、横顔を変えたいという方には、全体矯正が必要になる可能性が高いと私は考えています。

Q. 歯を抜かない矯正なら、部分矯正になりますか?

A. 非抜歯矯正と部分矯正は同じ意味ではありません。当院では、歯を抜かずに治療するために、奥歯や歯列全体を動かす全体矯正が必要になる患者さんもいると説明しています。

Q. 部分矯正は、全体矯正より後戻りしやすいのでしょうか?

A. 後戻りはどちらでも起こり、治療後の保定が重要です。私が重視しているのは治療名だけではなく、必要なスペースがあるか、歯根の位置までコントロールできているか、なぜ短期間で終われるのかという点です。

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