FAQよくある質問

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矯正治療全般について

Q矯正治療はいつ受けるのがよいでしょうか?
A

ひと昔前まで、矯正治療は子どもだけのもののように考えられていましたが、今では大人になってから矯正治療をされる方も多くなっています。
子どもの時期に早い段階で治療すれば、体が発育途中なので骨や筋肉などの成長を利用できる一方、子どもの歯は大人の歯より柔らかいため治療期間中に虫歯になりやすいことや、乳歯がある時期からの矯正治療は治療期間が長くなることが多いというデメリットもあります。
また、親の意向で治療を行う場合、患者さん本人の協力が得にくく、途中で中止することになったり、協力が得られないために治療が長引いてしまったりすることもあります。
でですから、患者さん本人が矯正治療を受けたいと思われた時が、治療にふさわしい時期だと考えます。

Q現代の食生活と顎関節症に関係はありますか
A

顎の進化と食生活の変化も無視できません。近年、私たちの食文化は柔らかい食べ物を好む傾向にあり、これが顎の発達に影響を与えています。以前は硬い食材を噛むことで顎が発達していましたが、今では顎が十分に使われず、親知らずが生えるスペースが不足することが増えてきました。親知らずが生えてくるスペースがなくなると、親知らずが横向きに生えてきます。今では親知らずがきちんと生えている方が少なくなっているのが現状です。

十分に噛まなければ顎は発達しません。顎の発達が悪いと嚙み合わせに影響が出やすく、顎の関節や筋肉にかかる力が違和感や痛みに繋がります。
当クリニックでは顎関節症のある患者さんの矯正治療において、約80~90%の患者さんは症状の改善を実感してくださっていますが、中には期待通りの結果を得られないと言われる方もあります。100%の成功率ではない以上、歯科医師は慎重に診断しなくてはなりません。また、患者さんも歯科医師の説明をしっかり聞いて納得した上で治療に臨むことが重要です。

Qいびきは健康にどのような影響を与えていますか
A

正常な呼吸は、鼻を通じて気道が十分に開いている状態で行われます。しかし、いびきをかく人は舌が気道の一部を塞ぎ、空気の通り道が狭くなるため、いびきが発生します。特に肥満の人は、舌が大きくなりやすく、仰向けに寝ると重力で舌が下がり、気道を圧迫するのです。
また、睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に呼吸が何度も停止し、気道が完全に閉塞してしまうことがあり、これが命に関わる危険な症状です。無呼吸の状態は、まるで首を締められているかのように体に影響を及ぼし、その時間が長くなると脳に酸素が届かず、眠りが浅くなることから疲労感や集中力の低下を引き起こします。

いびきは気道が完全に閉塞するわけではなく、極度に狭くなった際に生じますが、これが進行すると睡眠時無呼吸症候群に発展します。そのため、いびきをかく人の中には、数%がこの病気に該当することがあるのです。
実際に、睡眠時無呼吸症候群が原因で新幹線の運転中に居眠りをする事件が発生したこともあり、社会生活において重大な事故につながることがあります。また、小児がこの症候群にかかると、乳幼児突然死症候群や脳障害の原因になることもあるため、注意が必要です。

それでは、どのようにいびきを治療したらよいのでしょうか。いびきの治療法には、口蓋垂(一般に「のどちんこ」と呼ばれている部分)の切除手術や呼吸を補助する装置などが存在します。
また、スリープスプリントと呼ばれるマウスピースのような器具で簡単に改善できる場合もあります。つまり、口や歯、顎の位置が呼吸や睡眠、ひいては健康に大きく関わっているということです。

Q歯並びは私たちの心身にどのような影響を与えていますか
A

私たちの体には、意識して動かす筋肉と無意識で動く筋肉があります。心臓や肺のように、生きている限り自動的に働くものもあれば、スポーツや日常生活で意識的に動かす筋肉もあります。このように、私たちの体は様々な筋肉の協調によって機能しています。
食事の際、食べ物を口に入れた後、私たちは意識することなく噛み砕き、飲み込みます。この一連の動きは「咀嚼運動」と呼ばれ、非常に重要な役割を果たしています。正しい噛み合わせを持つ方は、顎の動きと筋肉の働きが調和し、体に無理なく食事を楽しむことができます。しかし、歯並びが悪い方や噛み合わせに問題がある方は、顎が不自然にずれ、筋肉に過剰な負担がかかってしまうのです。

しかし、多くの歯科医が顎関節症の患者さんの治療を避けたがります。一つ目の理由は、噛み合わせの治療が非常に複雑で専門的な知識を要するため、取り扱うのが難しいことです。
二つ目は、長年にわたって噛み合わせの問題に悩まされている患者さんが多く、時には心理的なストレスからノイローゼ気味になってしまうことがあるからです。こうした患者さんは、治療の過程で不安や疑念を抱きやすく、歯科医師が行う治療に対しても過敏になり、自分自身で治療方針を指示するようになることがあります。歯科医師も患者さんの要望に応えようとするあまり、適切な治療が行えず、結果的に良い結果を得られないことが多いのです。このような経験をした歯科医師は、再び同じ状況に直面したくなくなり、噛み合わせの治療を避ける傾向が強まります。

当クリニックには、様々な背景を持つ患者さんが訪れます。中には、前の医院での不適切な対応から心身に不調を訴える方もいらっしゃいます。私たちは患者さんの生活の質を向上させる大切なステップとして、歯並びを整える「矯正」治療や、顎関節の機能を回復させられるよう適切な治療を提供することが私たちの使命です。
顎の健康を守ることは、全身の健康にもつながります。正しい「歯並び」と噛み合わせを実現するために、ぜひ専門家の助けを借りてください。

Q理想の歯並びになるには、どうすればよいでしょうか
A

患者さんから、「有名人のような歯並びにしてください」といったリクエストを受けることがあります。しかし、歯の大きさや顎の形状など、個々の身体的特徴によって、他の人と全く同じ歯並びを実現することはできません。
歯並びは人それぞれです。美容整形で全員が特定の有名人のような見た目になることが難しいのと同じく、各々の骨格に合った美しい歯並びが存在します。理想の歯並びは、他の人に違和感を与えないことが重要であり、そのためには患者さん自身の希望と、医療的な観点からのアドバイスをしっかりと考慮しなくてはなりません。

治療を進める上で、患者さんの強い希望を尊重することは重要ですが、無理な要求を優先すると、後々トラブルを引き起こす原因になります。たとえば、「有名人のような歯並びにしたい」という思い込みから治療を進めると、期待外れの結果になり、患者さんも歯科医師も不幸になってしまいます。

矯正治療の目的は、見た目の美しさだけでなく、機能的にも健康的な歯並びを実現することです。患者さんの希望を最大限に尊重する一方で、医療従事者としては、体に悪影響を及ぼす可能性がある場合には、しっかりとした説明を行うことが必要です。例えば、無理な矯正によって体調を崩してしまうようでは、何のために治療を行ったのかが問われます。

患者さんが自分の希望を遠慮なく伝えることは非常に大切ですが、実現可能なことと不可能なことを明確にすることも重要です。治療の初期段階でしっかりとコミュニケーションを図ることで、歯科医師と患者さんの双方にとって幸せな結果を導くことができると考えています。

Q虫歯と知覚過敏は違うものですか
A

矯正治療を始めた患者さんから「歯がしみる」との声がよく聞かれます。歯がしみると、虫歯になっているのではないかと不安に感じるかも知れません。しかし、実際にしみる感じがする場合、ほとんどは虫歯ではなく「知覚過敏」という症状です。

知覚過敏は、テレビのコマーシャルなどでもよく耳にする言葉で、歯がしみる感覚のことを指します。この症状は、歯ぐきがやせて、歯の根元が露出することで起こります。知覚過敏を経験する人は少なくありませんが、特に矯正治療期間中には、この症状が現れやすくなります。

嚙み合わせの悪さのために矯正治療を受ける方は、特定の歯に過度な力がかかりやすく、その周囲の歯茎がやせることがあります。歯茎がやせて歯の根元が外部にさらされると、知覚過敏が引き起こされます。
さらに、矯正治療中は歯が揺れる状態になるため、歯周病と同様の状態が生じやすく、これも知覚過敏の原因となっています。

つまり、矯正治療中の知覚過敏は虫歯によるものではないということです。知覚過敏の症状は、フッ素ジェルを使用するなど適切なケアで改善されることが多く、1週間も経てば症状が軽減することがほとんどです。ですから、矯正治療中に歯がしみると感じた場合でも、虫歯であると心配する必要はありません。

Q矯正期間中の転居や結婚など、ライフイベントにはどのように対応できますか
A

治療前に予め決まっているライフイベントがあれば、治療期間を考慮して、患者さんと相談をしながら進めることになりますが、急に転勤などが決まることもあるでしょう。
転勤となると、それまでに受けてきた治療方法や噛み合わせに対する考え方が同じ歯科医院を探さなければなりませんが、現実的には歯科医師によってそれぞれ治療方針や考え方は違います。ですから、治療途中での転院は、新しい先生にとってはいろいろな意味でプレッシャーになります。

一般に矯正治療の料金設定は、治療開始から終了までを考えて設定しています。便宜的に初めにいくらで、調整料金がいくらでと言う風に分けているところが多いのですが、途中で転院される場合に、次の医院で同じような料金設定にしてくれることは、まずありません。と言いますのも、初めの頃の治療の方が簡単で、終盤の、正しい噛み合わせを作っていく作業の方が断然難しいからです。
従って、患者さんにとっては、一軒の歯科医院で矯正治療を終了する場合よりも、二軒の歯科医院にまたがる方が、負担が増えることがほとんどでしょう。
そこで人生のライフイベントにも対応できるよう、当クリニックでは転居の際はカルテを引き継ぎ、同じ治療方針で治療を継続できる体制を整えていますので、ご安心いただけると思います。

また、矯正治療途中の結婚式ですが、原則的には、治療開始から終了まで、矯正装置は外せません。
矯正装置は、一度外してしまいますと、次に同じブラケット(歯に装着する物)を使用して装着してもかなり外れやすくなってしまいます。それに、矯正治療で歯を動かすのに少しずつ時間をかけてやってこられたのに、いったん矯正装置をはずしてしまうと、元に戻るのはその何倍も早いのです。

そして、矯正治療中に歯を動かしている時には、歯はグラグラしています。ワイヤーで結ばれているために痛みを感じませんが、それらを外して1本1本の歯にしてしまうと、噛んだ時に歯が動くので歯が痛みます。
一時的に矯正装置を外すことは不可能ではありませんが、こうしたデメリットがあるため出来る限り外さないように勧めています。

Q矯正治療期間中に妊娠しても大丈夫ですか
A

30歳以上の女性患者さんが矯正治療を受けられることが増えてきました。その中で、妊娠に関する不安を抱える方も少なくありません。実際に、治療中に妊娠された女性もいらっしゃいますので、矯正治療と妊娠の関係は、多くの方にとって気になるテーマとなっています。

まず、当クリニックの矯正治療は、一般的に1年程度で終了することが多いです。そのため、治療開始時点で妊娠していなければ、特別な心配をする必要は少ないと言えます。しかし、治療前に妊娠が確認されている場合は、出産後に治療を開始することをお勧めします。これは、妊娠中に体が変化しやすく、特に口腔内の健康状態に影響を与える可能性があるからです。
妊娠中は、つわりがある方も多くいます。つわりの症状には個人差があり、頻繁に吐き気を感じたり、食事が取れなかったりすることもあります。このような状況では、矯正装置があるとさらに不快感を引き起こすことがあります。そのため、できるだけ矯正装置のない状態で過ごすことが望ましいです。

加えて、妊娠中はホルモンバランスが変化し、歯茎が炎症を起こしやすくなります。これにより、歯周病のリスクも高まりますので、矯正治療中の妊娠はなるべく避けることを推奨します。歯茎の健康を守るためにも、妊娠を計画している方は、矯正治療のタイミングを慎重に考える必要があります。

矯正治療中に妊娠が判明した場合は、歯科医師に相談してください。今後の治療の進め方や妊娠中の口腔ケアについての適切なアドバイスをお伝えしています。妊娠と矯正治療の両立については専門の歯科医師の意見を参考にしていただき、あなた自身の健康と赤ちゃんの健康を守るためにも、計画的に進められることをお勧めします。

Q歯を抜くか、抜かないか、どう判断すればよいですか
A

最近、歯を抜かない矯正治療が注目され、多くの患者さんが「歯を抜かないなら矯正治療を受けたい」と考えるようになっています。しかし、矯正治療において歯を抜くか抜かないかの判断は、患者さんの希望だけで決めるべきではありません。治療の選択肢をしっかりと理解し、専門家の意見を聞くことが重要です。

歯科医院によっては患者さんの希望に応じて「歯を抜かないで治療しましょう」というアプローチを取ることがありますが、これは特に重要な決定です。矯正治療においては、噛み合わせや口腔内の健康が最優先されるべきで、単に美容的な観点からだけ判断することは避けるべきです。

歯を抜いて矯正するか、抜かずに矯正するかは、噛み合わせの高さや歯列のバランスに大きな影響を与えます。
治療に関する選択肢には、ブラケットの素材や矯正の方法など、さまざまな要素がありますが、ブラケットの色や素材と違い、歯を抜くか抜かないかという問題は単なる好みの問題とは異なる深刻なテーマです。
治療を受ける前に、クリニックの方針や歯科医師の考えをしっかり確認しておくことが大切です。

Q歯を抜く矯正治療にはどのようなリスクが考えられますか
A

歯並びが悪い方で小臼歯を抜いて矯正した場合、歯と歯の間に隙間が残ることがよくあります。これは、歯の大きさと顎の長さを基にして抜歯を行うべきところを、どの患者さんにも等しく小臼歯を抜いてしまうと、あまり歯並びが悪くない患者さんにとっては抜いたスペースが大きすぎることになり、隙間ができてしまいます。隙間を解消するために歯列のカーブを小さくしてつじつま合わせをしようと歯を内側に倒してしまうと、今度は嚙み合わせが悪くなるという別の問題が生じます。

また、歯並びがそれほど悪くない場合に、小臼歯ではなく前歯を1本抜く選択をすると、左右の歯並びが非対称になってしまいます。このように、歯を抜いて矯正治療を行うことには、さまざまな問題点が存在します。
一方で、歯を抜かない矯正治療では、歯を外側に広げたり、後方に動かしたりして歯を並べることが可能です。この方法では、矯正後に隙間ができる心配が少なく、健康的な歯並びを保つことができるのです。

Q矯正治療中は噛みにくくなりますか
A

矯正治療中、多くの患者さんが「噛めない」と感じることがあります。特に、特定の歯が強く当たってしまうことも少なくありません。これは、治療の過程で避けられない現象です。

矯正治療を始めると、まずは悪い噛み合わせを一旦「崩す」必要があります。これにより、元々の噛み合わせであった状態から、徐々に正しい噛み合わせへと移行していくのです。この過程では、ある程度の間は噛みにくくなるのが自然なことです。たとえば、昨日までは右側で噛むのが楽だったのに、今日は左側の方が噛みやすいと感じることもあります。これは、歯が動くことによる一時的な変化です。

治療の初期段階では、どこで噛んでいいか分からなくなることもありますが、これは全く心配する必要はありません。むしろ、今までの間違った咀嚼システムをリセットし、正しい咀嚼機能を再構築するために必要な期間です。

矯正治療も同様に、一旦白紙の状態に戻すため、噛めるようになるには時間が必要です。痛みを感じることもあるかもしれませんが、これも治療の一環です。最終的に、正しい噛み合わせを手に入れるための大切なステップとお考えください。

Q矯正治療は体に悪影響がありますか
A

矯正治療は昔から存在していましたが、なぜ今になって「体に良くない」といった情報が広がるようになったのでしょうか?
昔は、矯正治療を受ける患者さんの数が少なく、その多くが子供であったため、顎関節症などの問題もそれほど注目されていませんでした。周囲に矯正治療を受けている人が少なければ、比較の対象もなく、「これが普通」と納得することが多かったのです。
さらに、顎関節症という病気自体がほとんど知られていなかったため、矯正治療との関連性も一般的には考えられていませんでした。しかし、最近では矯正治療を受ける大人の患者さんが増え、顎関節症も社会的な問題として認識されるようになりました。このような背景から、矯正治療に対するさまざまな情報が一般に広まるようになりました。

矯正治療は、全ての歯を動かし、噛み合わせを根本的に変える治療です。この大きな変化は、神経系や筋肉系に新しいシステムを記憶させることを意味します。正しい状態でインプットされれば、体にとって非常に良い影響をもたらします。しかし、間違った方法でインプットされた場合、体にとって辛く、有害な結果を招くこともあります。つまり、矯正治療自体が悪いのではなく、その治療過程が全身に多大な影響を与えるため、慎重に行う必要があるのも事実です。

矯正治療は、見た目の改善だけでなく、噛み合わせを正すことで全身の健康にも寄与します。正しい噛み合わせは、食事の際の効率的な咀嚼を促進し、消化器官への負担を軽減します。また、顎や顔の筋肉のバランスを整えることで、顎関節症の予防にもつながります。
したがって、矯正治療は「良くない」とされるのではなく、正しい方法と適切な管理のもとで行われれば、非常に有益な治療法です。患者さんには、治療の過程や効果について十分な理解を持っていただき、安心して治療を受けていただきたいと思います。